起訴になり透析以外留置場で特にやる事も無く移送待ちをしていたある日の事

弁護士が裁判の打ち合わせに来ていてその時急に思い出したように

俺を含めた3人の名を上げ一家から処分されたと聞かされた

やっぱりそうかと思ったのとその中に俺も入ったかと言うのがその時の正直な気持ちだった

何かしらの処分があるのは想像がついていた

今回の件では一家や会に随分迷惑をかけていたのは分かっていた

それと同時にこれを機に堅気になろう今回は堅気として懲役に行こうと腹を括った

堅気として懲役に行こうと言うのは何か特別な手続きをする訳ではなく

この先拘置所や刑務所に行けば知り合いに会うかもしれないし

または刺青などを入れてればどこの組の人間か聞かれる懲役ではお互いやくざと分かれば互いに所属を明かし挨拶をするのが普通だった

今までの懲役で俺は元何々組に所属していてなどと自分から言う人間を何人も見てきてそうゆう人間を俺は
現役だった事もあってか格好が悪いと思いあまり好きじゃなかった

酷いのになると元を付けづ名乗って出所後問い合わせたらそんな人間いないと言われる事も珍しくなかった

だからこの先拘置所や刑務所で知り合いに会ってしまえばそうは行かないがそうでない限り元何々組みと言うのも含め名乗らずに行こうと決めた

これが俺の考える堅気として懲役に行くとゆう事だ

それに堅気になろうと思った最大の理由は今回の件で組が事実上無くなった事だ

処分された3人のうちの1人が組長なのだから仕方ない

今回の件で大半が捕まり残ったのは部屋住みの若い衆とその時懲役に行っていた者だけなのだ

これで俺も堅気になる腹を括った訳だ

だからと言って留置場の中では何が変わる訳ではなく拘置所への移送待ちの退屈な日々が続いていた

そして4ヶ月が過ぎたある日ついに移送が決まった

県内にはいくつか拘置所があり大体県庁所在地に本所があり後は幾つかの支所があるのが普通だった

本来なら管轄的にも俺が行くのは支所のはずだった

しかし支所では透析に対処できずに本所に行く事になった

でも本所に行く事は実は分かっていた

なぜなら隣町の留置所に透析患者が入っていてその人間が本所に行っていたからだ

留置官は俺がパクラれて留置場に来る事になった時隣町の留置官に透析患者の受入れに関しいろいろ話を聞いたらしい
  
移送が決まっても面会も手紙も書けないので大してやる事もなかった

そして移送前日最後のタバコの時間

拘置所に行けばもうタバコは吸えない

俺は2本のタバコを時間をかけゆっくりと味わった

そして吸い終わると心の中でこれを機に禁煙を誓った

事実この日以来今日に至るまでタバコは吸っていない

そして留置場最後の日
           
出発直前俺が留置官に最後の挨拶をしているのを一緒に永くいた奴らが金網越しに立ってそれを見ていた

すると留置官の一人がそれを見て「いいぞ、一言挨拶してやれ」と言ってくれた

俺は振り向くと留置場中に聞こえるように大きい声で「いろいろお世話になりありがとうございました」と言って一礼した

みんなそれぞれ「体に気をつけて頑張って下さい」や「1日も早く出れる様に頑張って下さい」と言ってくれた

俺はもう一度礼をして「ありがとう」と言って留置場を後にした

留置場の扉を出ると連行の留置官が「出てく時こんな挨拶したの見た事ねえぞ」と言うともう一人の連行官も「本当だよ」と言った

それを聞き俺はなんとなく嬉しい様な誇らしい気持ちになった

こうして4ヶ月半にわたる留置場生活は終わった

この時点で体重は120kを少し超えた位まで落ちていた

                                  今日はここまで